もしもサンタさんがクライアントだったら?
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もしもサンタさんがクライアントだったら?

Fenrir Designers


これは フェンリル デザインとテクノロジー Advent Calendar 2021 21日目の記事です。

白猫シロさん、後輩の悩みにのる

 ここはフェンリル株式会社にゃんこ支部。「デザインと技術でユーザーにハピネスを」をモットーに、アプリを作ったり、システムを考えたり、社員猫たちは毎日がんばっています。
 白猫のシロさんは、そんなにゃんこ支部のデザインディレクター。経験豊富でみんなから頼られる存在です。そんなシロさんは、最近後輩が悩んでいる様子なのが気になります。シロさんは後輩に、話を聞いてみることにしました。


クライアントはサンタさん

白猫のシロさん「クロさん、最近悩んでいるようだね。なにか困ったことがあるのかな?」
後輩のクロさん「実は……お客さんとのやりとりで、失敗が続いているんです」
シロさん、以下○「あら、しっかり者のクロさんが珍しいね。クロさんがいま担当している案件は……」
クロさん、以下●「『トナカイ走行管理業務アプリ』です。お客さんは、サンタさんなんです」
○「そうだったね。サンタさんと会議となると、確かにちょっと緊張しちゃうかもしれないね」
●「それはもちろん! 毎回ウェブ会議なのに、とても緊張します。でも、そのせいで失敗する、って訳じゃないんです。困っているのは、会議中に言ったらいけない、『NGワード』がたくさんあることなんです」

クライアントが不思議な要望を出してきた?

○「NGワード? 例えば?」
●「例えば、『予算』とかです」
○「ほうほう。お金の話がNGってことかな? 確かに、お金の話をする時は、タイミングに気をつけないといけないけれど……」
●「まだまだありますよ。『納期』もだめで、『リモート会議』もだめ。NGワードを連想させるのも、だめな時もあるので『こちらはまだ暖かいですが、フィンランドの天気はいかがですか?』なんて聞いたらアウトです。リモート会議をイメージしてしまうので」
○「なるほど……? 単に単語を言っちゃだめって訳じゃないんだね。それは大変だね」
●「そうなんです。もう、多すぎて覚えられないぐらい」
○「ちなみに、NGワードを言ってしまうと、どうなってしまうのかな?」
●「サンタさんの回線が落ちます」
○「サンタさんの回線が落ちる?」
●「はい、ウェブ会議なので。サンタさんの画面が固まって、そのうちウェブ会議室から退出してしまいます」
○「サンタさんが自分で退出しているのではなく?」
●「はい。しばらくすると戻ってきて、謝るんですよ。会議を中断させてごめんなさいって。NGワードを言った僕のせいなのに……」
○「ふーむ……」
●「僕も、失敗しないように工夫はしてみたんです。NGワードは全部メモに書きだして、手元に置きながら会議をしています。でも、そうするとメモばかり気になって会議がぎくしゃくしてしまって。自然に話そうとすると、うっかり禁止な言葉を言ってしまうんです。サンタさんにも申し訳なくて……どうしたらいいでしょうか」
○「ふむふむ。なるほどなあ」 

クライアントの意図を考えてみよう

○「聞いていると、とても難しいルールがある中、よく案件を回しているなあって思ったよ。クロさんのお客さん思いの気持ちは、きっとサンタさんにも伝わっているよ」
●「でも、もう失敗は繰り返したくないです……」
○「うんうん。それじゃあ、一緒に考えてみよう。まず『NGワードを言わないように気をつける』『そのために、NGワードを書き出して管理する』ことが、今クロさんが取り組んでいることだよね」
●「はい。NGワードを言っちゃうたびに、その言葉を記録しています。二度と同じ失敗をしないために……」
〇「まず、そもそもどうしてNGワードを言ったらいけないんだろう?」
●「そういえば、なんでだろう……。初めて会った時に『こういうことは言わないようにしてくれると嬉しいな』って言われたけれど」
○「サンタさんが『予算のことは会議中には触れないで』って言ってきたってことかな?」
●「シロさん! サンタさん本人は、もちろん『予算』というNGワードを使えないですよ」
○「あっ、本当だ。あはは、ひっかけ問題みたいだね。でも、それじゃあどうやってシロさんは、言っちゃいけない言葉が何なのか、知ることができたんだろう?」
●「えーっと……」 

クライアントの言葉を思い出そう

●「そうだ、思い出しました。初めて会った時、こういう風に言われたんです」
○「なになに?」
●「『私は世界中の子どもたちにプレゼントを届けるために、たくさんの魔法を使っている。魔法のおかげで私は存在できるし、おもちゃをたっぷり準備して、空を飛び回り、たった一晩でプレゼントを配ることだってできる。でも、その魔法は、簡単な言葉ひとつでとけてしまう、とてももろいものなんだ。だから会議中は、まるで子どもが聞き耳を立てているかのように発言してほしい』って」
○「子どもが聞き耳を立てているかのように……なるほど」
●「もう少し具体的なことも言っていたんですが……なんだっけ。議事録を見れば分かりますよ」
○「ありがとう。でも、今ので大体分かった気がするよ」
●「えっ。本当ですか? じゃあどうして、予算とか、納期とか、リモート会議といった言葉を、口にしたらいけないんでしょうか?」
○「それは、サンタさんの魔法を弱める言葉だからだよ、きっと」

クライアントの要望の理由が分かってきた

●「サンタさんの魔法を弱める言葉?」
○「うん。例えば、お金の話。サンタさんは魔法を使って、世界中の子どもたちのためのおもちゃを用意している。でも、そのお金は一体どこから? どこから仕入れているの?」
●「シロさん! そんな話、子どもが聞いていたらどうするんですか……あっ」
○「うんうん。気づいたみたいだね。サンタさんの魔法と、『予算』という言葉は相性が悪い。現実的な言葉は、サンタさんの魔法の力を弱めてしまうんだ」
●「そっか……」
〇「納期の話もそう。サンタさんは魔法を使って、普通なら何人も、何時間も必要な仕事を、一晩でやってのけちゃう。いったいどうやって? そんな納期をどうやって守っているの? ……我ながら、こういうこと言うの嫌だなあ」
●「リモートの話は……サンタさんはフィンランドにいるけど、同時に世界中のいろんな場所に現れることだってできる。リモートという言葉自体、サンタさんに使うのが変なんだ」
○「そうじゃないかなあ」
●「ははあ、そういうことか。それで、NGワードが出てくると、サンタさんの回線が落ちちゃうのか! 魔法を弱める言葉のせいで、サンタさんの存在自体が不安定になっちゃうからなんだ」
○「それだと、筋が通るね」

クライアントの本当の「ご要望」

●「わかりました。NGワードを言っちゃだめ、って訳じゃないんだ。サンタさんの本当のお願いは、魔法がとけないように協力してね、ってことだったんだ」
○「そのとおり!」
●「なるほど。これならなんとかなりそうです! メモに禁止の言葉を書き出して、いちいちチェックしなくてもよかったんだ」
〇「じゃあ、これからは?」
● 「魔法がとけないように気をつける。NGワードを機械的に回避するんじゃなくて……自分の言葉が魔法を弱めてしまわないか、自分で判断してから、発言する!」
○「いいね! そう考えられるクロさんなら、きっともう失敗したりしないよ。そう、理由さえしっかり分かっていれば、細かいことをいちいち覚えなくても、うまく対応することができるんだ。それに、応用がきくようになる。自分で判断しながら話すことって、難しそうだけど、実はとても自由で、ストレスが少なく済む方法なんだね」
●「訳も分からずにあれこれ禁止されるより、そもそも禁止の理由を教えてくれた方が、効率的に回避できますもんね。よく分かりました」

クライアントワークすべてに言えること

○「お客さんから、『こうしてほしい』『これはやめてほしい』って言われた時、つい分かりました! って答えて、その通りにしちゃうことってあるよね」
●「あるあるですね」
○「もちろん、お客さんの要望はしっかり聞き込みしないといけない。でも『どうしてこうしてほしいんだろう?』『どうしてやめてほしいんだろう?』と、常に理由を考えないといけないんだよね」
●「クリエイティブなお仕事の基本ですよね。気をつけているつもりなのに、すっかり頭から抜けていました」
○「そう。基本だけど、ついつい忘れちゃう。ちょっと忙しかったり、ほんの少し自信をなくしたりするだけで、『なんでだろう?』と立ち止まって考える余裕がなくなってしまう。クロさんは今回、失敗しないようにしなきゃ! というプレッシャーで、最初のサンタさんのお願いを忘れてしまっていたのかもしれないね」
●「ほんと、その通りです。シロさんに話して、すっきりしました」
○「それはよかった。そういうのって、誰かに話すと解決することも多いよね。話すことで頭のなかが整理されて、落ち着いて考えられるようになるからかもしれないね。もし、また何かモヤモヤしたら、誰かに話してみるといいよ。もちろん、私でよければ話をきくよ」
●「はい! ありがとうございます!」

みんな夢のある仕事をしている

○「それにしても『まるで子どもが聞き耳を立てているかのように、発言してほしい』かあ……」
●「子供たちの夢を壊さないように、ってことですよね」
○「予算や、納期や、リモート会議が、夢を壊すって言われると、なんだかちょっと切ないねえ。夢のない仕事をやっているみたいでさ」
●「そんなことないですよ!」
○「おっと?」
●「予算も、納期も、リモート会議も、現実的ですけど、夢を叶えるのに必要なことです。魔法と矛盾するけど、魔法と同じぐらいのパワーがあります。だから、僕らだって、夢のある仕事をしているんですよ。ただその方法が、ちょっと現実味が強いだけなんです」
○「…………」
●「って、サンタさんが言ってました。あなたたちの仕事もリスペクトしていますって」
○「……それは嬉しいねえ。なによりの言葉だね」
●「サンタさんの期待に応えられるように、僕がんばります!」


後日談

 後輩はやる気いっぱいで、仕事に戻っていきました。シロさんも、思いがけず励まされたおかげでやる気アップです。聞くところによると、後輩はその後、時々NGワードを言っちゃいながらも、リラックスして会議に臨めるようになったとのこと。いいアプリができそうですね。フェンリル株式会社にゃんこ支部は、今日もユーザーのハピネスのためにがんばります。

※この話はフィクションです。にゃんこ支部はございませんので、猫さんの採用は現在おこなっておりません。ごめんなさい。

書き手:デザイン部 玉川


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