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ブルーボトルコーヒーとUXデザイン

ブルーボトルコーヒー、関西2店舗目、国内9店舗目となるブルーボトルコーヒー神戸カフェの内覧会に行ってきた。

正直、最初は海外から来たオシャレなカフェという印象しかなかった。スタバとの違いもよく分からずで、そういう意味では、かなりフラットな状態で内覧会に足を運んだことになる。

中央にカウンターがあり、そこそこの面積を占めるが、真鍮のフレームが、客席とカウンターの境界の役割を果たしているせいで、開放感を保ちつつも、メリハリを感じられる。

天井は高く配線が剥き出しで、椅子やテーブルもナチュラルで無骨なイメージ。まるで、どこかの工房のようである。そういえば、神戸はアパレルメーカーを始め、多くのクリエイターが活躍している街だったな、とふと思う。

ソファー席やハイテーブル席など、63席あるという客席は、スペースが広く取られており、ストレスを感じることはない。

ブルーボトルコーヒーの店舗はインテリアも含め、内装は全て店舗ごとに異なるデザインがされているとのことである。神戸は港町として発展し、様々な人たちが行き交う街、そしてコーヒー発祥の街と知られており、そんな神戸らしさが反映されている。(下写真は客席の様子)

35度を超える猛暑日であったため、冷たいコーヒーカクテルをいただく。パイナップルの爽やかさとカスカラ(コーヒーの果実から種を取り除いて乾燥させたもの)の酸味と炭酸のシュワシュワが絶妙なハーモニー。おいしい。(写真左:Mid Summerというコーヒーカクテル、写真右:Cascara Pineapple 。私がいただいたのは右のほう。)

さて、ブルーボトルコーヒーの内覧会を楽しんだという話で終わったら、それはこのnoteの趣旨とは異なってくるので、本日垣間見たブルーボトルコーヒーのこだわりが、まさにUXデザインの典型的なケーススタディであったので、その話をしたいと思う。(UXはUser Experienceの略であるが、ブルーボトルコーヒーの場合、CXだろう。Customer Experience、ではなく、Coffee Experienceかもしれない。)

UXデザインの本質

UXデザインという概念が一般化しつつあるが、殊更に、"ユーザーのために""ユーザー・ファースト"という言葉が一人歩きしているように感じる。ビジネス中心の経営層に対するレジスタンスとして、ユーザー中心主義が謳われるようになったかのようだ。

確かに、ユーザー・ファーストであるべきではあると思うが、提供者側のこだわりを蔑ろにしてまで、ユーザーに迎合する必要は全くない。行き過ぎたユーザー中心主義はブランドやサービスの存在意義、提供価値をユーザーに見失わせる。その結果、逆にユーザー離れを起こさせるのである。

UXデザインとは、ビジネスとユーザー、コンテンツの接点を見つける作業であるが、まずは、ビジネスとして成り立たなければ意味がない(継続性という意味でも、チームのモチベーション維持という意味でも)。

そういう意味では、ユーザーへの提供価値とそれから得られる対価(直接的な売り上げや利益だけでなく、集客による他事業とのシナジーやブランド価値の向上などもある)というものを予め固めた上で、その提供価値を価値として受け取ってくれるユーザーを探し(その事業領域でどのようなユーザーがどのような課題を抱えているのかを探す)、そのユーザーがその価値を最大限享受できるコンテンツを提供するというのが筋である。

そうすれば、サービスの価値をわかってくれるユーザー(こういうユーザーはファンになってくれやすい)がビジネスを支えてくれるようになるのである。

ブルーボトルコーヒーの提供価値

翻って、ブルーボトルコーヒーの提供価値は「おいしいコーヒーを提供すること」である。よくスターバックスは、コーヒーを売っているのではなく、場所を提供しているんだ、と言われるが、ブルーボトルコーヒーは紛れもなくコーヒーを売っている。

お客さんが、おいしいコーヒーを飲むという体験を最大化するために、あらゆるインタフェースがデザインされている。単純におしゃれな空間を作っているわけではない。

「おいしい」という感覚はそれこそ人それぞれであるため、ユーザー・ファーストで考えると、ブルーボトルコーヒーは日本人の口に合ったコーヒーを独自に提供すべきである、となる。しかし、そうやって提供された日本仕様のコーヒーは、長年提供してきた、米国仕様のものと比較して、確固たる自信が持てないものになってしまうだろう。

(もしかすると、今後、時間をかけて自信を持てる味が提供できるようになれば、日本仕様のコーヒーが登場するかもしれないが、)まずは、自分たちのコーヒーの味を受け入れてもらう、コーヒーという体験をよりよくする場所やサービスを提供する、そして、それを日々改善しながら、どんどんファンを作って行く、というのがブルーボトルのやり方なのである。

提供価値:おいしいコーヒー

コーヒーはトレーニングされたバリスタが提供しているのだが、その抽出にかける時間やお湯の量などはすべて、スケールとタイマーで計測している。これにより、コーヒーのポテンシャルを最大限に引き出しつつ、味の均質化を保っている。焙煎してから最適な期間のものしか提供していない(日程/時間ではなく、豆ごとに適した日程に変えているらしい。ちなみにお土産にもらったコーヒー豆の賞味期限は焙煎日から2週間だった。)など、もちろん、豆へのこだわりも半端ない。バリスタは腕をキープできるように、より多くの日程入れる人(未経験の人もいる!)を歓迎しているらしい。これにより、いつでも、誰が飲んでも、同じ味のコーヒーが提供できるのがブルーボトルコーヒーの強みである。

我々の提供しているようなサービスに置き換えると、サービスの根幹となる機能については、早いレスポンスを提供するだけでなく、安定性、継続性を保つことで、ユーザーの満足度は上がってくる、というようなことである。

インタフェース:デザインされた空間、ホスピタリティ溢れるスタッフ

ブルーボトルコーヒーは、その街との調和を大切にしている。

水色のボトルのロゴは街とのコントラストが大きく、存在感を主張している一方で、外観や内装はいたってシンプル(その街にとって華美ではないという意)であるため、街の雰囲気に溶け込んでいる。ドアノブを掴んだ時の感触までもこだわっているらしい。

そして、スタッフは常に笑顔であたたかい(内覧会という特別な日であったことを差し引いても)。スタッフの面接のときなどは、何をしてきたか、何をしているかということよりも、いかに細かい気遣いができるか、を見るようにしているとのこと。(写真左:神戸カフェ店長の海野さん、写真右:トレーナーの南田さん。いい笑顔。)

これまたアプリに置き換えると、通常利用しているOSとの親和性、例えばiOSならiOSのお作法に倣うことで、ユーザーは違和感なく利用できる、であったり、トーン&マナーに親近感を持てるようにする、であったり、困った時にすぐに解決してくれるサポートの仕組みを提供する、であったり、といったようなこと。

「おいしい」は継続する

「おいしい」という感覚は、その瞬間は味覚だけのものであるが、時間が経過すると、その時に過ごした時間がいかに素晴らしかったか、が、記憶の中の「おいしかった」に直結する。別れ話をしながら食べた高級なフレンチより、大好きな仲間とワイワイはしゃぎながら作ったブサイクなたこ焼きの方が、「おいしかった」と言えるのと同じだ。

ブルーボトルコーヒーは、おいしいコーヒーを中心に、ストレスを一切感じない広々とした空間とホスピタリティ溢れるスタッフで、味だけではない最高のコーヒー体験を提供している。

そう言えば、ブルーボトルコーヒーには、コンセントもないしWi-Fiもなかった。これまで読んでくれた方なら、それがなぜか分かるだろう。

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というわけで、本日 7/20 にブルーボトルコーヒー神戸カフェがオープンしたのですが、ブルーボトルコーヒーのPRを担当されている徳田さんと、京都カフェや神戸カフェで何らかのイベントをやりたいね、という話をしています。

UXという観点で、セミナーやワークショップなんかができるといいなと思っているのですが、どうせなら京都や神戸にゆかりのある企業や学生とコラボしながら、それこそ、地域に密着した持続性のあるイベントにしていきたい。もちろん、コーヒーを中心に。

もし、興味のある方がいらっしゃれば、ご連絡ください。コメントでも、Facebookでも。

書き手:坪内陽佑(コーヒーと書き過ぎて、ゲシュタルト崩壊起こし気味)

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