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新規サービス、必要なのは「綿密なリサーチ」か「まずリリース」か。

何らかのアプリやWebサービスを検討しているとして、事前に綿密なリサーチを行ってから要件定義を行い、精度を高めてからリリースすべきか、まずは自分たちで考えた機能やコンテンツでできるだけ早くリリースし、その後で反応を見ながら舵取りをしていくべきか。どっちがいいのか、はたまたケースバイケースか、悩みはつきません。(ここでは、そこそこの規模かつ新規性の高いアプリ開発を念頭に置いてます。)

事前に綿密なリサーチを行うべき?

事前に綿密なリサーチを行うということは、それなりの期間と予算が必要になってきます。フェンリルの場合、コンセプト検討フェーズとして1.5~2ヶ月程度の期間で、ターゲットユーザーに対するインタビューや資料調査、ニーズの抽出、ペルソナ・シナリオの作成、グランドコンセプトの策定、コンセプトデザインの検討などを行います。これを行うことで、見当違いのアプリを作ってしまうことは回避できるのですが、確実に成功するかと言われると断言できるものではありません。

そういう状況なので、そこに予算やスケジュールをかけるよりもまずは、最小構成で最速でリリースして市場の反応を見たいというクライアントの心境はよく理解できます。

では、さっさと開発してリリースするべき?

では、まず、市場の反応を見るために、自分たちで考えた要件でさっさと開発してリリースすべきなのでしょうか。

それはそれでありなように思えるかもしれませんが、実際にリリースまでしてしまうのは、リスクが高すぎるでしょう。リリースしてから改善していく前提があったとして、ファーストリリースが散々な結果だった場合、果たして満足いく追加予算が取れるでしょうか。理解のある経営者であれば、問題ないでしょうが、普通は、いくらMVPとしてのリリースで改善が前提となる場合でも、そこそこの結果を出すことが望まれます。

我々が見てきたプロジェクトでも、初回リリースが散々な結果に終わり、開発が継続しなかった案件は、山ほどあります。

出来るだけコストをかけずに、かつ素早く、ある程度成果が見込めるサービスをリリースするなど夢物語でしょうか。

ユーザーの反応を見るのにプロダクトをリリースする必要はない

まずリリースして市場の反応を見るという戦術は、素早いようで実は遅いのだということに気付くべきです。何より、そこには、時代遅れの「まず行動しろ」的精神が垣間見えます。

そもそも行動=リリースではないですし、他社より先んじることで自社のアピールをしたいのであれば、サービスの開発プロセスを公開するなどすれば、開発中の他社よりはるかに先んじている印象を市場に与えることができるはずです。

では、どうすればいいか。

私は、既存の利用者の多いプラットフォーム上でやってみるというのが1番素早くて信頼性が高いと思っています。

例えば、AIで問い合わせを処理する機能をつけたいなら、まずはLINEでやってみる。Vコマースアプリを立ち上げたいなら、まず、Instagramでやってみる、という具合に。

結局のところ、アプリやウェブサイトというのは、インターフェースでしかないので、ユーザー側からすると、自分の課題が解決するなら導入のハードルが低い方がいいわけです。(もちろん、セキュリティ不安を感じるユーザーも多いので、信頼でなりたってるようなサービスとかだと厳しい場合もあります。)

多くの企業が、本当は自社アプリやサービスを立ち上げたいけど、予算がつかないからまずは既存のソーシャルメディアのプラットフォームで立ち上げるという選択をしていると思いますが、予算があっても、時間があっても、まずは、利用者の多い既存プラットフォームに乗っかって、立ち上げコストを下げた分、コンテンツの安定供給と運用体制を固めてから(ここ重要です)、アプリ開発に乗り出すべきです。

(既存プラットフォームもただの手段でしかないので、それだけでユーザーが増える、満足する、などというのは基本的にあり得ません。例えばLINEでクーポンを配信したり、ユーザーサポートしたりということはできますが、それすらまともに運用できていないのであれば、アプリの運用は諦めた方がいいでしょう。)

昔からcontent is kingと言われてますが、コンテンツ無くして、サービスは立ち上がりません。特に最近ではスマホの機能だけで完結するようなアプリが、ヒットすることはほとんどなく、良質なコンテンツをいかに供給するか、それをどのように運用するか、ユーザーとどういった関係性を構築していくのか、などの方が圧倒的に重要です。

まずは、そこに全精力を傾けた方がよくて、安定的なコンテンツ供給が望まれるようになってから、手のかかるアプリやウェブサービスの開発に臨む方が良いでしょう。ここでいうコンテンツとは、サポートの質を高めるといったことやAPIを整備してユーザーに配信できるデータ項目を増やすといったことも、もちろん含めます。

自社メディアを持たずにコンテンツ制作に特化して、各ソーシャルメディアに最適な形式で配信する、という分散型メディアというのが少し前に話題に上がりましたが、もはや、エンタメだろうが、金融だろうが、最近のソーシャルサービスのソリューションで提供されていないものはないのではないといってもいいぐらいなので、ガンガン活用するべきだと思います。

もちろん、ソーシャルメディアだけじゃなく、例えば、Google Formなども多用できますし、いろんなサービスを組み合わせていけば、デザインの一貫性は無いにしても、サービスコンセプトの受容性評価のためのテストマーケティングとしては、十分すぎるほどです。

エンジニアの協力がそこまで必要ない場合も多く、 マーケチームと少しの開発リソースでスピーディかつ低コストでやれます。

そして、一定の効果が見込めると判断してから、新たな手段として、アプリ対応などを進めていけばいいでしょう。

スタートアップ界隈では、これらのサービスを使って簡単にニーズ調査してからカジュアルにサービスを作るというのが増えてきているような気がしますが、大企業だとそもそもクラウドサービスだというだけで、利用が制限される場合が多いようで、身軽に動くことすら難しいというのもあるとは思います。

ですが、GAFAなどの世界に名だたる大企業群のサービスがそもそもクラウドで成り立っているということを考えると、クラウドを利用しないという経営判断はもはや今後あり得ないといってもいいかもしれませんね。

小さい成功体験を最速で積む

小さい成功体験をいかに最速で積むか、これにこだわることが重要です。
そして、成功体験とは、プロダクトをリリースすることだけではありません。ポジティブなフィードバックを得ることでチームが前向きになる、事業の可能性を感じられる、など、プロダクトをリリースしなくても得られる成功体験はたくさんあります。

まずは、「最初の成功体験」を定義し、そこに向かって最速、最小のコストで突っ走ることを目指しましょう。


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YOSUKE TSUBOUCHI / Fenrir Inc.

デザイン部次長/HCD-net認定人間中心設計専門家/フェンリルでサービスデザイン、プランニングをやっています。デザイン組織の戦略マネジメントも最近のお仕事の一つ。

Fenrir Designers

フェンリルでデザインに携わるスタッフが運営するブログです。
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